Jaled Dar その家族関係

 Jaled Darとその血統には、開発者が意図した皮肉な悲劇と、あるいはそれを越える謎が纏わる。なぜHarla DarはVelious大陸にいるのか。夫と共にVeliousを離れなかったのか? 彼らの息子Fraka Darは、いつ生まれたのか?

 Proof for Phara Darクエストで、Phara Darは弟Frakaを「まだ仔竜であった(was only a whelp)」と語る。Fraka殺害に言及する、巨人と竜の内通者Zlandicarの密書を運ぶも「a small dragon」と形容するし、運搬役のネズミが持っている「Frakadar's Left Eye」はidentify名「undigested portion of a young dragon」である。(参考 AllakhazamよりProof for Phara Darクエスト
 Pharaは、父Jaled Darの死後、Ring of Scaleの指導者の座を受け継いで二千年近くになる。竜たちにとっても、彼女は世代的に、そして恐らく寿命上でも、若いとは言えないだろう。何しろ、世界で最も高齢な、第一世代の竜でさえ、五千歳ちょっとなのだから。
 Frakaの死は、ゲーム内現在に近い時点の出来事と推測される。もしFrakaが姉に近い時期に生まれていたら、Pharaはたとえ身内についてであったとしても、このような形容をするだろうか? もしJaled DarとHarlaの別離が、Jaled Darの死の間際であったとしても、Frakaがすぐに誕生したとは考えにくくはないか。

 竜の卵がすぐに孵らない場合もあることは、別の例から知られている。EQ2世界でNagafenとVoxの間に発生した卵はそのままでは孵らず、Nagafenが幽閉されていた「火山地帯の環境」が必要なのではないか、とVoxは推測している、とされる。
 ここから想起されるのは、Velious大陸で竜が誕生するTemple of Veeshanや、Ring of Scaleの本拠Skyfire Mt.が、周囲の地勢からは考えられない溶岩の流れる灼熱地帯であることだ。後者は、わざわざ魔法的にその地勢を作ったらしい。
 つまり竜の卵を孵すためには、環境等の条件があるのだろうか? 卵が産まれてから孵るまで、間隔を置くことが可能なのだろうか? しかし、それが可能だとしても、なぜFrakaの卵は長く孵らないままだったのだろうか?


 Jaled Darが一部の竜族を率いてVelious大陸外へ移住したのは、EQ2の設定文書を信じれば、Rallos ZekのPoE侵攻と敗北の後、Kerafyrm支持者と保守派の決定的対立以前であるようだ。(参考 EQ2wikiより該当記事
 しかし、資料は錯綜しており、この順序を支持しないソースもある。
 正確な年代を知ることは難しいが、二~三千年前の出来事であることは間違いない。この二派閥の分離は、竜族にとって決定的な出来事と認識された。Dragon Nameクエストは、Veliousに残った竜たちが、「去った竜の血統と名を、記憶と文書から消し去った」と伝える。(参考 AllakhazamよりThe Spirit of Garzicorクエスト
 しかしながら、新VP keyクエストによれば、彼らも死後はVeliousのDragon Necropoliceへ送られた。そこで身体(の一部)を火葬することが、死後の星界への旅立ちを助けると信じられているようだ。(Klandicar死亡時の発言を参照)

 話を戻そう。Jaled Darは娘Phara Darを連れてVeliousを去り、生きた状態では二度と妻に会うことはなかった、というのが一般的な解釈と思われる。
 しかし、Harlaも同行し、いずれかの時点でVeliousに戻った、という解釈も可能で、その場合彼女はVeliousの竜たちにとって「公式には存在しない」者だったことになる。
 Proof for Phara Darクエストによれば、Frakaの死を確認した冒険者に対してHarlaが渡すアイテムは、「Jaled Darが死の数ヶ月前にHarlaに対して愛の証として贈った」記念の形見である。
 ほぼ完全な分裂状態にある別派閥、別大陸にいる竜の間に、日常的に可能な事だろうか? この点を考慮すると、Jaled Darの生前、彼らは同居していたとする方が自然にも思える。
 そうでなければ、Jaled Darはこの時、死を覚悟していたと解釈することもできよう。それが、Sebilis皇帝との一騎打ちによるものと予期していたかはともかく。

竜の交配に関するタブーについて

 竜にとって最大のタブーは、同族殺し、そして異なる体色(Elemental属性)間の交配である。現代では、竜はどのような条件があっても、竜を殺すことはできないようだ。そのタブーの強さを物語るエピソードは枚挙に暇がない。
 あえて番おうとした火竜Nagafenと氷竜Voxは、離れた洞窟に幽閉された上、竜の団体(Ring of Scale)から冒険者に対して「殺害報酬」が提示される。交配は許せないが、処罰として竜が自ら殺すこともできないのだ。
 拡張The Serpent's Spineでは、一部の竜たちがVeeshanの鱗を独占するLetharの野心に対抗し、竜と人類の魔法的混血種族Drakkinを創造する。他の竜を殺すため、タブーに従う必要がない種族を作ったのだ。

 これらのタブーはいつ成立したのだろうか。Kerafyrmが封印され、the Sleeperと呼ばれて以降だろうか?
 交配の禁忌はKerafyrm以前から存在したとされるが、それでもKerafyrmは産まれたのだから、現在ほど厳重なタブーではなかったのではないか。


 同族殺しに対するタブーの成立期にも、同じ疑問がある。かつて、竜同士の戦闘があったとする伝承が存在するからだ。Kerafyrmの支持者と旧来勢力の対立時や、IksarをめぐるRing of Scale内の意見対立だ。
 特にいわゆるKunark年表では、TrakanonがRing of Scaleの方針に反してセビリス皇帝Rileを海上で殺した後、竜同士の戦闘があり、「空から巨大な死体が落ちるのが地上種族に観測された」と書かれる。現在からたった(?)二千年ほど前の出来事である。
 これについては、いわゆる「Kunark年表」が、有力プレイヤーフォーラム「Druid Grove」に、開発者資料という触れ込みで投稿されたものであり、ゲーム内、あるいは公式のソースで公表されたものではないという事情も考慮する必要があるだろう。

 体色問題に関する一つの手がかりとして、ゲーム内に実在する同一血統の竜を取り上げて考えたい。同一体色(Elemental属性)の竜同士が結婚して子を残す以上、彼らは同じ体色を持つはずである。といっても、判明している竜の家族はそれほど多くないのだが。

Yelinak(夫)とHsagra(妻)とMyga(子孫)
典拠:Porlo's Furyクエスト(通称Dragonbane)
 Hsagraは他にも言及多数。正確にはMygaはYelinakの血筋、としか説明されないが、他にYelinakの妻がいたとは考えにくい。
 Yelinakは白く、Iceという言葉が使われているくせに属性はMagic系。Mygaは灰色っぽい白、属性不明。(何だっけ? ええ、憶えてなくてですね、調べても不明で)
 Hsagraはすでに死んでいるが、Bard epic1.5クエストでHsagra`s Shadeとして登場する外見は黒い。(同じzoneにあるJaled Dar`s shadeのグラフィックを使い回したのか?)状況が状況なので、生前は白かった可能性は否定できない。

Kildrukaun(父)とVyskudra(娘)
典拠:Grendish the Crusaderの発言
 The Sleeper Tombに登場した時、Kildrukaunが黒いのに対し、Vyskudraは腹と角が黒っぽく、他は白い外見だった。属性は双方ともMagic。(彼らFour Disciplineのグラフィックは解放前Warderの使い回しではない)しかし2007年発表の拡張Secrets of Faydwerでは色問題との関係は不明ながら、Crystallosに出現するVyskudraは腹が白っぽい黒竜に変わった。
(この拡張では、他にも複数の既知の竜のデザインが変更されている)

Jaled Dar(夫)とHarla Dar(妻)とPhara Dar(娘)とFraka Dar(息子)
 Fraka Darはすでに死んでいて外見、能力共に不明。しかし何故か彼はゲーム内で「young dragon」と形容され、一体いつ生まれたのか興味深い。
 残り3体は(Jaled Darも死んでshade状態だが)非常によく似た(というか同じ)外見で、紫をアクセントにした黒の体色と、独特の四本角が特徴。属性はどうやらMagic系。
 その4体以外のいわゆるDar一族が、実際に同一血統に属する確証はない(一部は同一血統と考えるべき設定だが)。個体によっては、同一とするのを躊躇わせる程、その特徴は異なってくる。

Shade Of Khalan Dar(EQ2)
 EQ2のVPで、Pharaの隣にいるらしい。外見は幽霊型、能力はPharaコピーなのか? Epicにdropが使われるとか。背景情報不明。

Suled Dar's Shade(Skyfire Mountains)
 新VP keyクエストに登場。VPという地形を作り、Iksarとの戦争で死んだ。このクエストでは、RoKの竜も普通は死後Dragon Necropolisに送られた(Jaled Darが特例ではない)とか、面白い話が出てくる。

 この述べた2体は、明らかにJaled Darとの血統を意識して作られたと考えていいだろう。

Aerin`Dar(Plane of Valor)
「clystaline dragon」と形容され、実際そういう外見をしている。要するに透明で白く輝く体色。Glassと称されるAE(属性Magic)を吐くが、生来のものではなく、Glass化の影響によるものかもしれない。元からあの場所にいた、かつては純真善良(?)な竜だとか。

Rydda`Dar(Halls of Honor)
 Mithaniel Marrに認められた勇者が記念されている霊廟で、その功績を追体験するtrialに登場する敵。つまり過去にどこかで殺された竜。AEでAerin`Darとイメージの似たCrystal系(属性Magic)を吐き、体色が白い。

Kelorek`Dar(Cobalt Scar)
 Cobalt Scarのチョウチンアンコウ(Faydedarコピー)。海竜型、体色緑、属性unresistableで不明?

Lantaric`Dar(Wakening Land)
 Bard epic1.5のNPC。KaelのGiantを監視していて、そのお使いを頼んでくる。このクエスト群のクライマックスが、Hsagraアンデット化イベント。体色黒(Vulakコピーらしい)。

 結論。開発者(あるいはグラフィックデザイナー)はそこまで深く考えていない。
 いやしかし、その結論で終わってしまうと、このような無駄なこじつけの価値がないので、無理やり続けよう。特にDar一族に顕著な体色の違いをどう考えるか。

□解釈1.Darと名前についていても、同一血統ではない。まあ、これでもいいだろう。

□解釈2.重要なのは色そのものではなくElemental属性であり、黒~白は「Magic属性を表す一つの色」として扱うべきである。

□解釈3.Dar一族は、Kerafyrm誕生以前に、他色交配を行った実験の結果である。
 これは上記二案に比べて、明らかに曲解的だが、私はこのような曲解もまた、可能ではないかと考えてしまうのだ。

固有名詞の表記変動

 この間のJaled Darの名前、つづり間違ってないか? という突っ込み(誰もしないかもしれないけど)に答える。
 彼、というかDar一族の名は、時期によりゲーム内で表記のずれがある。

「Jaled-Dar」RoK期(Emperor Ganak、faction名)
「Jaled Dar」SoV期、DNにいるのはJaled Dar`s shade。
「Jaled`Dar」その後この表記に移行した(Seeds of Destruction登場時等)。
 他のDar一族も、登場時期によって表記が変わる。ハイフンDarは恐らく他にいないので、その後の二つを前期、後期と考えていい。(例外的にKelorek`DarはVeliousで登場したのに後期表示らしい)

 特に後期の表記はこのゲームの固有名詞に頻出する表現で、'(初期に多い)と`(Velious以降こちらが一般的)が混在して紛らわしい上用法や意味が不明だが、たぶん現実世界に存在しない固有名詞を作る意図と思われる。
 同一人物で平然と変わっており、発音記号的な意味はないと考えていいのではないか。同一人物の表記が変わっている理由も不明だがが、まあこのどれでもいいんじゃない?(投げやり。しかしこのおかげで検索がやりにくいったら……)

Jaled Darの世代問題

 First brood (of Veeshan)は、文字通りNorrathを発見したVeeshanが産んだ卵、Norrath産Dragonの第一世代であり、Norrath最初の知的生物。
 一般にfirst broodと知られるのは、Jaled Darが「Sleeperの封印に関わり、今も生きている」と名指しするYelinak、Zlandicar、Sontalak、Lendiniara、Klandicarの5体、及びYelinakの妻Hsagra。
 Jaled Darも、しばしばプレイヤーコミュニティでfirst broodとして扱われる。これらの事情を知っている上に、Sleeper's Tombのkeyを作れるJaled Darがfirst broodであった可能性は高いと推定される。
 しかし、2004年時点ではゲーム内でそう明言された典拠は(論文なら「管見の限り」と書くところ)存在しない。

 一つの手がかりとして、First Brood Talismanがある。名前からして、First bloodが所持すると思われるが、実は最初に挙げた5体の内Zlandicar、Klandicar、Sontalakの3体はdropし、残り2体からはdropしない。
 恐らく、それぞれがいるzoneをベースにloot tableが作られたことが理由と推測される。(所持していない2体はToVにいる)
 この件との関係は不明だが、Allakhazamへの投稿で『LendiniaraはFirst Broodではなく、First Broodであった親からtalismanを受けついだ』という主張がなされた。
 しかし、LendiniaraはA Message from XygozクエストでXygozからFirst Broodであると明言されており、ToVにいる場合はこのアイテムを持たない、と考えるのが妥当であろう。
 そして、Jaled Darの妻Harla Dar、全く背景情報のないJen Saparaの2体も、このアイテムをdropする。この2体について「単純なloot table設定ミス」とする意見もある。根拠は主に、この2体の名前がST keyクエストに見えないためと思われる。

 しかし、そう簡単に片付けていいものだろうか? Jaled Darは一度も「現在生存しているFirst Broodはこの5体」とは言っていない。「封印に参加したdragonのtalismanがあれば、First BroodであるかのようにSTに入れる鍵が作れる」と言っているだけだ。

□仮説1 Jaled Darが言及する5体は、「First Broodでありなおかつ積極的にthe Sleeperの封印を行った現存のdragon」であり、封印に参加しなかったFirst Broodがそれ以外に生存している可能性は否定されない。(もしかしたら、この5体にだけ言及した理由は「特に嫌がらせをしたかった奴ら」なだけだったりして……)

□仮説2 Harla DarはFirst Broodであり、封印にも参加しているが、Jaled Darは愛する妻を冒険者に殺させないために、彼女のことは教えなかった。(物語的解釈としてはけっこうありそう。Jen Sapara問題が解決しないけど……)

 ここでHarla Darにこだわるのは、彼女がFirst Broodであるかどうかと、Jaled DarがFirst Broodであるかどうかには、強い関係があると考えるから。
 何しろ、First Broodには最初、同腹の兄弟姉妹しか番う相手がおらず、しかも同色でなければならない。もちろん、他の兄弟が産んだ次以下の世代との通婚も可能だが、体色制限のことも考えると、最初の2、3世代にとって通婚範囲は相当狭かったと考えざるを得ない。
 Dragonに近親婚という概念や、それをタブーとする文化が存在するかを考えないとしても難しい。(実際に初期のDragonはほとんど兄弟婚と思われるため、タブーの範囲として親子婚しか想像できないが……近代のDragonは、また違った意識を持っている可能性はある)
 Harla Darが第一世代であれば、その夫であるJaled Darもまたそうである可能性は高くなる。このように、Jaled Darが第一世代であることと矛盾しない傍証はあるが、反証は発見されていない。
 ちなみに、有力なKerafyrmの支持者であるFour Disciplineは全員First Bloodであると誤解されることがあるが、この内KildrukaunとVyskudraは父娘の関係であるため、少なくとも一体は異なることになる。

 Darの一族については、考えれば考えるほどいろいろ変な(あるいは小説にでもしたくなるような)ことが出てきますが、とりあえず今夜はここまで。

Norrathの衛星について

 

 かってNorrathに月が何個あるか、という問題がマニアックなプレイヤー間で議論された。存在が明らかな衛星は二つ、通常ゲーム内で見られる月Drinalと、不可視の月Luclin。環のあるLuclinは、PoSkyで見られる他、GMイベントで一時的に地上から見えたことも。
 プレイヤー間では、衛星は五つであるという主張が存在する(した?)。この根拠はゲーム中の書物『Immortals』によるらしい。この書物はMonk epicクエストの一部に必要とされ、Skyfire Mt.のドラゴン系から稀にdropする。
 この書物は読め、そこには五つの単語に対して難解な解説が書かれている。その内二つの単語がNorrathとDrinalであったため、他の単語も天体の名ではないかと推測された。しかし、その中にLuclinはない。他の単語が天体だとしても月とは限らないのでは?
 神々の到来以前のNorrathを知るのは(初期世代の)竜であり、かつての衛星の正確な個数を伝承した可能性がある、というのは合理的な推測といえよう。(参考 AllakhazamよりImmortals(Item)
 また、GMイベントでは通常と異なる天体が出現したことがあり、その記録が議論の引き合いに出されることもあった。(そんなのGMの適当な思いつきで出てきただけじゃないでしょうか……)(参考 http://blackdiamond.angelcities.com/miscss.html)(URLが生きていたことにびっくり)

 画像は、上記参考サイトより。Roの砂漠から望むLuclin。

 

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