竜が竜を喰らうとき あるいは竜の偏食

 Zlandicar。第一世代の黒竜。ゲーム内現在、冒険者たちがVelious大陸にたどり着いた時、彼は悪評に包まれ、他の竜族たちから離れてDragon Necropolisの深奥にいる。「屍肉喰らい」、若い竜に怪しい思想を吹き込む、竜の失踪の裏にいる、と噂されて。
 冒険者たちによって、その噂は全て真実だったことが明かされる。同族の屍肉を食べるばかりか、生きた竜を食べた(あるいは少なくも竜を殺して食べた)ことも。犠牲となった内一体が、これまで何度か触れたFraka Darである。更には、竜族の敵、巨人族と内通していた。

 彼は最初からそのような竜だったわけではない。(性格はひねくれていたかもしれないが)Zlandicarが最初に惹かれ、喰らった同族の屍肉は、皮肉なことにJaled Darのものだった。同族に喰われて肉体を失ったことは、Jaled Darが幽霊化した理由の一つだ。(出典 ゲームデザイナーKendrickの、the Safehouseへの投稿)
 それゆえ、Jaled Dar's shadeは、彼の死んだ場所ではなくDragon Necropolisにいるのだし、Zlandicarがその幽霊を閉じ込めた(いや……単に動けないのかもしれないが)霊廟の鍵を今でも持っているのだ。

 それほど憎むべき相手に対して、なぜJaled Darは呼びかけ続けるのだろうか。『Zlandicar、あなたの居ることは解っている。あなたがほかに行くところはない。耳を塞ぐな。我々には話しあわねばならないことがある』無音の墓所で、そう彼の霊体は叫び続けるている。
 Jaled Darは、冒険者たち以外に、若干の竜族の信奉者を得ていたことが知られる。(参考 Essence Lensクエスト)幽霊の状態で、例の弁舌で説得したのだろう。動けないJaled Darには、近くに来た者に話しかける以外の方法がないのだ。そして最も近くにいたのは……。

 千数百年の間に、この二体の竜の間に何があったのだろうか。確かなのは、どちらもが、最後にはDragon Necropolisに幽閉され、竜族への裏切りと取られる謀を進めていたことだ。Zlandicarの背反は、Jaled Darに唆された結果なのだろうか?
 そう考えを進めたとき、これまでと違った像が見えてくる。「Jaled Darは、息子が(生まれ)喰われたことを知らずに、呼びかけているのか?」
 いや、Jaled Darの息子だからこそ、その竜は喰われたのではないか? 美味だから。彼に嫌がらせをしたかったから? 彼を動揺させ、懇願させてみたかったから? それとも、竜族は滅ぶべきだという信念を、確固たるものにするために?
 Jaled Darはそう知った上で、叫んではいないか?

 喰うものと喰われたもの。いったい、どちらが真の捕食者だったのだろうか?
 Jaled Darは、竜族を滅亡に導くための手段として、憎悪する相手を説得し、信奉者候補を集めさせ、共に陰謀をたくらんでいたのだろうか。そしてもっと便利な駒である冒険者たちを手に入れて、愚かな古い手駒を殺させたのだろうか。
 愛憎極まる関係、最も美味だった相手の前で、薬で無力化したその仔を生きたまま喰ってみせる、とか。すばらしく薄い本の題材になりそう……いや、全員で竜で実体がないのがいたりとか、どう見ても需要がない。おかしいのは私の頭のようだ。(このまま収録していいのかな……)